第62話

喧騒とエンジン音で喧しいのに、よく通るその声は私の耳にしっかりと聞こえた。



カンの鋭い女め。そう心の中で悪態をつく。



母、美枝子46歳。


黒髪、夜会巻き、痩せ型、つり目。


趣味、お琴。


特技、私を捕まえること……。




美枝子の怒り狂ったブチ切れ顔が目に浮かぶ。




そうだ。話す話さないで悩んでる暇はない。


とにかく今は捕まるわけにはいかないんだ。



今日逃げ切ったところで問題を先延ばしにするだけ、と分かっているけども。

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