第59話

「着物姿の姉ちゃんが来る場所には見えねぇんだけどな。何してた?」



色々とビックリな光景に呆然としていた私を不審そうにじっと見つめる、異国の王子様ならぬ総長さん。



殴った相手のものと思わしき返り血を浴びて恐ろしい姿なのに、内面から醸し出す色気のせいでそれすらもワイルド補正の材料に見える。




あぁ、やっぱりカッコいい……。


ワイルドかつ爽やか。



そのくせ、その中性的な甘いマスクは時も場所も状況も忘れて見ている者をうっとりさせるくらいに甘い。




声だって素敵。


低いのに枯れてなくて。


声からマイナスイオンが出ている人が存在すると言うけれど、彼はまさにそれじゃないかと思った。

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