第58話

暴走族の内部事情なんて私は知らない。


けれど、倒れている人が彼らの仲間に止めを刺されているところをみると、対抗するチームといったところだろう。




これが……お兄ちゃんが居た場所、お兄ちゃんが好きだった世界…。



初めて見る光景なのに懐かしさえ感じてしまうほど、お兄ちゃんの面影を感じる。



正直怖いし、野蛮だと思う。


思う、のに……目には見えない何かが真っ白だった心にじわじわと侵蝕していく。



それが光か闇かは分からない。


けど……。


手が震える程、恐怖を感じていたはずの心は……いつの間にか少しの高揚感と“自由”という言葉に埋め尽くされていた。

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