第57話

「誰?こいつ」


「女?」




殺伐とした雰囲気の中、カラスマスクをした厳ついお兄さん達にじっくりと顔を覗き込まれ、逃げることも出来ずに生唾を飲み込む。



よくよく辺りを見回してみたら、その場の惨状が酷くて思わず「ひっ」と声が出た。




咳き込む声。許しを乞う声。怒声。

呻き声。罵る声。嘲笑う声。



あらゆる声と破壊音が響き、傷だらけの男が何十人も倒れてる。


視界を遮るくらいの砂埃が工場内を舞い、コンクリートの上に血がポタポタと滴り落ち、灰色の地面が次々と朱に染まっていく。




……酷い有り様だ。


とてもじゃないが、数分前と同じ場所とは思えない。

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