第88話

「でも、やっぱり昴とするのが1番好きだったなー」


「へぇ…」


「だって凄いんだもん。あいつ荒々しくってさ。部屋に入った途端、速攻ベッドに放り込んで来るの」




既に嫌そうな雰囲気を出してるのに、茉依さんは気にせず赤裸々にお兄ちゃんとの情事について語り出す。


凄く嬉しそうに。


聞きたくもない話をペラペラと。


耳を塞ぎたい衝動に駆られる。



「待ち切れないって感じでねー。噛み付く勢いでキスして来たかと思ったら、一瞬で服を剥ぎ取られて~」



やめて。



「もう無理って言ってるのに全然離してくれなくって。一晩に何回も~」



やめて。



「好きだ、好きだ、ってバカみたいに言いながら、私の体を~」




やめて、やめて、やめて、やめて、やめて。


もうやめてよ。聞きたくない…。



叫び出したい衝動を心の中に閉じ込める。



本気で求められてした行為と、情けで与えられた行為の違いを見せ付けられてるみたいだ。



自分には愛があったと見せ付けられてるようで苦しい。


頭が割れそう。


気持ち悪い。




「でもね、終わった後は凄く優しくしてくれて、いっぱいキスしてくれたの」


「……愛されてたんですね」



そのくせ、憎くて憎くてどうしようもないのに、やっと絞り出した言葉はそれだった。


反発したら好きな気持ちがバレてしまいそうで。


惨めったらしく受け入れて肯定するしかなかった。

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