第87話

仮にも婚約者の前で堂々と。


普通だったら問題だろう。




「そんなドン引きしないでよ。悪意はなかったんだから」


「はぁ…」


「私ね、好きなんだー。するの」


「そうなんですね…」


「そう。知り合ったら取り敢えず1回やっとくべき?って思っちゃう」




ニコニコ笑いながら言われたが、返答に困る。


どう言えばいいのか分からない。



大体そんなの教えられなくたって知ってる。


この人はお兄ちゃんとホテルから出てきた次の日に同じホテルから望都と出てきた。



また別の日には私の同級生と。


更に別の日には私の中学の数学教師と。



同じ習い事に通う生徒や講師。


よく行くコンビニの店員さん。


うちの宅配エリアを回ってた宅配便のお兄さんまで。



皆、彼女とイチャイチャしながら歩いてた。



左の鎖骨にキスマークを付けて。

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