第86話

「私、あいつとは幼なじみなんだ~」


「そうなんですか…」




人気の無い場所に誘導されつつ、中村さんとの関係を聞かされる。


中村さんとこの人は幼なじみだったんだ…。


昔からよく知った仲。


それこそお兄ちゃんとの仲よりもっと深い仲。


だから事件の事を追ってたんだろうか。


この人に何かしら頼まれて。



「あいつ真面目だけど、割りと良いよね。丁寧って言うか」


「……丁寧?」


「丁寧でしょ?あいつのセックス」




可愛いらしい声からは想像も付かない単語がポンっと出て来る。


余りにもハッキリ言い切られて少し動揺してしまった。



思わず歩く足を止めた私に茉依さんはクスリと笑う。




「あー、ごめんねー。若しかして、まだだった?」


「まぁ…」


「そっかー。ほんとごめん」


「いえ」


「別に寝るつもりは無かったんだよ?ただあいつ私のことが好きだって言うしー」


「………」


「それにほら、チエミちゃんと婚約したって聞いたから。なんか燃えちゃって。つい~」




そう言って茉依さんは悪意の無い顔でニコッと笑う。


本当に悪意の無い、あどけない顔で。


楽しそうにクスクスと笑う。

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