第84話

「もう、チエミったら、まだ選んでないの~?」


「あ、うん。ごめん」


「先に戻ってるからね?」



料理を選び終わったサクラが呆れた顔でノンちゃんと一緒にテーブルへと戻っていく。




「チエミちゃん?」



それと同時に背後から声を掛けられ、振り返ると茉依さんがトレイを胸に抱えて立っていた。



メイド服に身を包み、おっとりとした風貌の彼女。


目が合うなりニコっと微笑み掛けられたが、金縛りにあっているかのように動けなくなる。



一瞬、どうして私の名前を知ってるのかと疑問に思ったが、



「トッシーと婚約してるチエミちゃんでしょ?」



と言われて思い出す。




そうだ。


中村さんと茉依さんは繋がってたんだった。



なんてったって、中村さんはこの人の為にお兄ちゃんの事件について調べてたし、この人の為に私と先輩を出会わせた。


全てこの人の為に。

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