第83話

「違う!無い。それは絶対に無いから」



今にも教育的指導をして来そうなノンちゃんの肩を押さえ、心を込めて首を真横に振る。



絶対にそれは有り得ない。


私と彼の間に流れる感情はいつだって恋には程遠い歪なモノだ。


天変地異がひっくり返ろうが恋愛に発展する事は無い。


自信を持って言える。




「ならいいが。あいつだけは絶対にヤメておけよ」


「分かってる」


「近付くのもヤメとけ」


「うん」




力強く言われ、応えるように力強く頷き返す。


そんなの言われなくても分かってる。



きっとノンちゃん以上に私の方が近付かない方がいいと思ってる。




「……全く。アイツも昔はあんなやつじゃなかったのにな」


「そうなの?」


「あぁ。割と可愛げがあったぞ。乃愛のあ、乃愛、って無邪気に纏わり付いてきてさ」




ポツっと落としたノンちゃんの声に哀愁を感じ、歩き出そうとした足を止める。




「……若しかして、好きだったの?」




思わず聞いた私にノンちゃんは、




「さぁ…。そんな昔のこと、忘れてしまったわ」



と、俯きがちに答えた。

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