第77話

毒々しい真っ赤な口紅は今日も健在。


茉依って名前なんだな…と冷静に思う。



あれだけ嫉妬した相手なのに名前も知らなかった。


言ってたって当時は聞きたくもなかったけど。




「おい、大和。さっきから聞いてれば貴様は何だ?」


「あーん?」


「貰ってくれだの、いけるかもだの、男としてのプライドは無いのか」


「無い。男としての要求の方が強ぇ」


「クズめが」




眼鏡の奥から冷ややかな視線を向けるノンちゃんに、大和は持ち前のツリ目を細めて、だらしなく笑う。



本当に緩い。しかも適当。




「もういいじゃなーい。早くご飯を取りに行こうよ」



再び言い合いを始めそうな2人に痺れを切らしたのか、サクラがノンちゃんのセーラー服の裾を摘んで立ち上がる。

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