第66話

「キスマークなんか付けて…。いったいどうしたいんですか?」




恥ずかしくて照れくさくて思わず聞いてしまった。


理由を知りたいと言うより自然に口からポロっと出てきた感じ。


言ってみれば、照れ隠しのようなもの。



だって、あれだけ執着していたモノを自分が付けられたと思ったら妙な気分だ。


付けた事はあっても付けられた事はなかったから。




「何となく。手の1つでも出しとこうかなと思っただけ」


「えー」


「だからお前も言えば?したい事、全部」


「したい事?」


「して欲しい事とか。ねーの?」




付けた紅い痕を指でなぞりながら先輩が問うような視線を私に向ける。



言えば何でも叶えてくれそう。


叶えてくれると言ってるように聞こえてならない。


望めば何でも…。

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