第62話

「ぜってぇ行こうと思ってるだろ」



疑うような眼差しを見せる先輩に“まっさかー”と天使の様な笑顔を返す。



心の中の悪魔がフル活動。


今の私は無敵だ。


なんせ、嘘は吐いてないから。




「先輩ったら心配症ですね。行こうと思ったところで場所が分からないじゃないですか」


「お前のことだから見つけ出しそうで嫌なんだよ」


「そんな上手くいきませんって」


「いかすだろ。昴と一緒で無駄に行動力だけはあるし」




私の肩に腕を乗っけて、先輩は疲れたように、げんなりした声で呟く。



多分バレバレだけど、これ以上止めるつもりは無いんだろう。


少なくとも、もう怒っていないのは確かだ。



若干、不愉快そうな顔をしてるけど、纏う空気が柔らかい。




「若し行ったとしても友達には何もしないって誓ってくれませんか?」


「知るか」


「誓ってくれたら、帰るまでの間ずっとデレまくってあげますよ」


「そんなもん交渉に使うな」


「そうですか…。じゃあ、止めときます」


「いや。別にするなとは言ってねぇ」




退こうとした瞬間止められて、ちょっと笑ってしまった。


して欲しいんだな、って感じがして。

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