第48話

「俺は“兄貴”の役までは出来ねぇよ」


「………」


「好きな男の代わりだったら幾らでもしてやるけどな」




タオルで頭を拭きながら先輩が無表情でソファに座る。



胸がジリジリと痛い。


心の中を全て見透かされてるようで。



好きな人の代わりを先輩に求めて。


兄妹としての代わりも先輩に求めて。



私、先輩に求めてばかりだ。


何もあげれてないのに。




「チエミ」


「はい」



名前を呼ばれ、先輩の顔を見る。


浅くソファに腰掛けて私を見上げた先輩の顔付きは、さっきとはまるで違った。



冷たい目。


カローで見た時と同じ。


リバティーのトップとしての顔だ。


1つのチームの1番上に立つ男としての顔。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る