第46話

『他の男と口利くな』


『どうしてそんな事を言うの?』


『誰にもお前を取られたくねぇから』


『何それ…。自分は彼女を作りまくってるくせに?』


『そうだよ』


『キスマークだらけになって帰って来るくせに?』


『そうだ。それでも渡したくねぇと思うんだからしょうがねーじゃん』


『自分勝手』


『本当にな…。でも、渡したくねぇんだよ。絶対』




そう言って、痛いくらいに私を抱き締めて、優しく笑って頭を撫でて、『直ぐに戻ってくる』と出て行って、次の日の朝にはキスマークだらけになって帰って来た。



初めて告白した日もそう。


ずっと寝ずに待ってた私を抱き締めて『ごめん』って知らない香水の匂いをさせながら。


何度も迎えた残酷な朝をまた繰り返した。




もう、それが答えだと思った。


見せつけられたと思った。


何があろうと妹でしか居られないって。



だから純粋さも素直さも捨てた。


そんなのもうとっくに歪に曲がってた。



だから、体を重ねた後も続いた残酷な朝をあっさりと受け入れた。



キスマークだらけになった姿を見たって、香水の匂いがしたって、もう泣かなかった。



物言いたげな顔で見られたって『おかえり』って笑った。


笑顔でお兄ちゃんを抱き締め返した。




一晩中泣いた後だったからもう涙なんて出て来なかった。


貰った飴をただただ思い出してた。

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