第37話

でも、可愛い。


愛くるしいワンちゃんだ。




「この子、名前は?」


「エミ」


「え?」


「だからエミだ」




思わず聞き返した私に先輩がキッパリと言う。



エミ…。何だか名前まで私と被る。



態度や仕草だけじゃなく名前が似てるからソックリに思えるんじゃない?



いや、でも、ちょっと似てる気もしなくない。


と、反応に困って少し微妙な顔をしていると先輩が小さく息を漏らして笑った。




「昴に教えた時も今のお前と同じ顔をしてたわ」


「お兄ちゃんも?」


「あいつがポロっと“妹と名前が似てる”って俺にバラしちまったところから、あいつのシスコン話が始まったからな」


「そうなんですか?」


「そうだよ。隠しきれなかったんだろうな」




楽しそうに話す先輩の横顔を見つめる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る