第36話

「噂のワンちゃんですか?」



近付いていいのか分からず、少し離れた場所から声を掛けると、先輩より先に犬が私を見た。



“あんた誰よ。あたしのダーリンに何の用よ”って言いたげなツンっとしたお澄まし顔で、吠えるでもなく、逃げるでもなく、様子を窺うようにじっと私を見てる。



この子が擬人化させたら私と言われてるワンちゃんか。


先輩が溺愛してると噂の。




「そうだ。お前に何となく似てるだろ?」


「そうですか?」


「そうだろ。こいつもそう思ってんのかお前のこと嫌がってねーし」





「な?」なんて犬に向かって微笑みながら言った先輩に疑いの眼差しを向ける。



本当に?


先輩はそう言うけど、私から見ると警戒心バリバリな目で見られてる気がする。



先輩曰く、普段はもっと人が近付くと逃げるなり吠えるなりするらしいけど。

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