第33話

「後で話す」


「えー、気になるじゃないですか」


「それよりお前、店から出た後、何かあった?」


「どうしてですか…?」


「店で会った時にはしなかった男もんの香水の匂いがする。柑橘系の」




私の話をサクっと押し退け、先輩の色素の薄い瞳が探るように私の瞳を覗く。


普通の表情をしてるのに何処か威圧的だ。


嫌な意味で胸が音を立てる。




「酔っ払いに絡まれました」


「どんな風に?」


「こう、肩をガシッと」


「ふーん」




咄嗟に誤魔化したが、内心ヒヤリとする。


望都の香水の匂いだろうか…。


結構強めの香りだったし、首を絞められた時に移ったのかも知れない。


思い出すと血の気が失せる。

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