第16話

「なぁ、それより、ちょっとお願いがあるんだけどよ」



さっきまでヘラヘラ笑ってた阿部さんが急にビシッと姿勢を正してかしこまる。


両手を膝の上で丸めて随分と硬い表情だ。



いったい何?




「何です?」


「この間の“お願い阿部君”ってやつ、もう1回やってくんね?」


「えー」


「完全にれて無かったのが心残りでさぁ…。頼む!この通りっ」




もう本当にして欲しくて堪らないのか、阿部さんは立ち上がって土下座までやり始めた。



床にゴンっと頭を押し付け、デカイ図体を丸めて頼み込む姿をコンシェルジュの人が苦笑いで見てる。



また第三者の前でメルファに成り切るのか。


恥ずかしい…。


しかし此処で断ったらアニメ好きの名がすたる。


ちょっと楽しそうだし。

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