第8話

ペコと頭を下げた私に阿部さんはニカッと歯を見せて元気に笑う。



出会った当初に比べて随分友好的だ。


別人みたい。



慣れの問題?と疑問に思っていると阿部さんがテーブルに身を乗り出してグイッと顔を近づけてきた。


意味深にニヤニヤと笑いながら。




「それより、おめぇ、聞いたぞ。加賀さんの女になったんだってな」


「は、はぁ?」


「加賀さんが言ってたぞ。チエミは俺の女だ、って」


「嘘っ!?」




なんで!?どうして⁉一体全体何を考えてそんなこと言っちゃったの!?先輩!と声を大にして問い詰めたい。



あれだけ俺との関係は秘密にしとけと私に言ってたのに。



そもそも私は先輩の彼女じゃない。


付き合うなんて話、一切出てないもの。



いや…。


それとも先輩の中で私は既に彼女の位置付けに居るんだろうか。


“自分の女”ってカテゴリーに入れてたくらいだし。



だとしたら…。


それでもいいかな。



色々あり過ぎて疲れたし、先輩との関係が曖昧なままだと余計に心の中がモヤモヤする。

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