第5話

「そういや、メルファ。おめぇ、これから俺のことは阿部先輩じゃなくて阿部さんって呼べよ」



ボケっとしていた私に阿部先輩が言う。


強請ねだるような目で。




「また急に…。どうしてですか?」


「お前がさん付けで名前を呼ぶ時の声のトーンが若干じゃっかんメルファに似てるからだ」


「えー。じゃあ、熊さんって呼びます」


「まぁ、最悪それでもいい」




本当にいいのか…。と若干不満気な阿部先輩こと阿部さんに苦笑いを向ける。



どうやらコスプレフェスタのイベント会場で鉢合はちあわせて以来、彼の目には私の姿が“魔法少女メルファ”に見えて仕方ないらしい。



ずっと私の名前をメルファと呼んでる。


当たり前のように、あだ名でも呼ぶように。



別に呼ばれるのは構わないんだが、他の人が居る前でポロッと言ってしまわないか心配だ。


私はまだ良いけど阿部さん。


魔法少女好きがバレるけどいいの?と思う。

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