第65話

カウンターの中で焼き鳥を焼いていたお店の大将はそれを聞いて苦笑い。



咄嗟に『しー。そんなこと言っちゃダメ』と人差し指を口に当てつつ今城さんに言ったら、彼女は『どうして?だって本当にそっくりなのよ?』と不思議そうにキョトンとしていた。


どうやらそういう感覚が一般市民とは少しズレているらしい。



ちなみに伊那君はその時、焦り倒す私の隣で肩をプルプルと震わせて笑うのを我慢してた。




まぁ、だけど、今城さんが悪い子じゃないのは確か。



最初こそあれだったけど、料理を一度食べると『素晴らしいわ!こんな美味しいものが作れるなんて、貴方の味覚は神がもたらした奇跡じゃないかしら。天才よ』と大将を褒めちぎってたから。



勿論、それを聞いた大将は大喜び。


次々に『これサービスね』と料理を出してくれて、食べられなくなると今度は新メニュー作りの相談までやり始め、店を出る時には『おい嬢ちゃん。また来いよな。絶対だぞ』と今城さんと熱い握手を交わしてたところで居酒屋の話は終わる。



楽しかった一夜だ。


また今日も楽しめるといいなと思う。



しかし、今時家にあの広さの鳥小屋があるって、いったいどんな家に住んでるんだろう…。



宮殿レベルかな?


想像もつかない。

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