第60話

「それじゃ宜しく頼むな。今城さん」


「はい」


「それで今城さんに付いて貰うものだが…」


「あ、待って下さい。私、桑子さんから教わりたいです!」


「なに?安久谷さんにか?」


「はい。お願いします」



キラキラと目を輝かせながら、今城さんは私の腕に絡みつき、おねだりするように部長の顔を見る。



純粋無垢なあどけない表情だ。


なのに、圧倒的な権力で部長を押さえ付けているように見えるのは気のせいだろうか…。



断ったらお父様に言って左遷させてやるからね、覚えてらっしゃい。と顔に書いてあるようだ。


しかも本当に左遷されそう。



「あー、まぁ…」



無言の圧力を掛けられて頼まれた張本人の部長もたじたじって顔をしてる。


頷くしかないって雰囲気。



「いいでしょう?」


「んー」


「いいわよね?」


「分かった。それじゃ安久谷さん、宜しく頼む」




予想通り部長が折れたのは直ぐのことだった。

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