第58話

『宜しいんですか?』


『はい。買うか迷ってたくらいなんで』


『本当に…?』


『いいですよ。気にせずどうぞ』


『まぁ!嬉しいっ。ありがとうございます!』



内心後ろ髪を引かれる思いで渡した私だったが、ネックレスを受け取った時の彼女の綻んだ笑顔が最高に輝かしくて、手離す頃には釣られて笑顔になっていた。



欲しかったネックレスは手に入らなかったけど、何だか得した気分になったくらい。



あまりの嬉しさに帰り道、ルンルン気分でアイスを買い、一人で鼻歌まで歌ってしまったのは、ここだけの話。



悪役人生を歩んできた私がちょっと良い人になれた心暖まる唯一のエピソードである。

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