第57話
『はぁ…。やっと買いに来れた…って、え?嘘…』
今城さんもそのネックレスを買いに来たんだろう。
空になったショーケースを見ると、ガックリと肩を落とし、ショボくれてた。
それも余程欲しかったのか憂いを帯びた顔をしていて。
『うっ…』
そういうのに弱い私。
心の中が罪悪感で埋まる。
そりゃ、めちゃくちゃ欲しかったネックレス。
これを逃したらもう2度と手に入らないし、悩んで悩んで買うと決めたもの。手放したら絶対に後悔する。と、思った。
この子と私は運命で結ばれた相手。
絶対に幸せにすると決めたの。
私はこの子を心の底から愛してる。
数ヶ月に渡り逢瀬を重ね、そして今やっと囚われていたガラスの檻からこの子を助け出すことが出来たのだ。
そう。今からやっと私達のハッピーライフが始まる…。始まるのだが…!と、そりゃもう悩みに悩んだ。
が、肩を落として去っていく今城さんの背中が余りに寂しくて、気付いたら追い掛けて肩を叩き『良かったら譲りますよ』と言っていた。
これも縁。私とこのネックレスには縁が無かったのよ。グッバイ、ネックレス。さよならネックレス。彼女に沢山可愛いがって貰ってね。幸せになるのよ。と頭の中で自分を納得させながら。
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