第41話
毎度、飽きもせずに後ろからこそこそと忍者か。
直接言いに来たらいいのに、と思う。
じゃなきゃ言い返すにしたって、わざわざこちらから『今、私の悪口言ったでしょ』って喧嘩しに行かなきゃいけないじゃない。
別にやったっていいけど、あれをやった時の相手が繰り出す『え、言い返しに来た…』って、焦ったような時が止まったような空気感が嫌だ。
大したこと言った訳でもないのに、まるで不足の事態でも起きたように『ムカつく!生意気!言い返してきた!』って必死にピーピー仲間を呼び集めてパニックってる姿を見ると『なんか可哀想な人達だな』と急速に冷める。
なんだか、ちっぽけなモノを見た気分と言うか、小さい集落で偉ぶってるだけの人等に思えて、呆れると共に怒りが萎みダルくなり、騒ぐ相手の姿をまるで餌に食らいつく池の鯉でも見ているかのような気持ちで見てしまうのだ。
仮に冷静に悪口を言い放れても一緒。
余裕ぶって笑ったり、ど低い声とポーカーフェイスで威嚇してきたり、相手は“負けない私”をカッコ良く演じてるつもりでいるが、こちらは表情や口調や仕草の微妙な変化で相手の焦りを感じ取ってしまう。
『あー、鼻の穴がピクピクしてるわ』『目の瞬きが無い』『口角の上がり方がいつもより上よ』『唾を飲み込んだわね』『表情筋は?凝り固まってしまったの?』『捨て放つみたいな言葉の発し方ね』『一瞬、息を止めたでしょう』『吃りそうよ』『声を出す前に気合いを入れたわね』『さっきからポーズが固まったままだけど、一旦停止でも押したの?』『今にも背中を向けそうね』『こっち向いてくれない?視線が微妙に下よ』
あぁ、動揺していらっしゃるのね、と。
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