第13話
「ちなみにどの資料です?」
「明日、取引先に持っていく青色の」
「あー、あれですか」
カチカチとパソコンのキーボードを叩く伊那君。
悲壮感たっぷりに黙り混む私と、絶望感に打ちひしがれた暗い表情で哀愁を漂わす部長。
3人の中に沈黙が流れる。
誤解は解けたみたいだが、資料は戻って来ない。
これはもう完徹で作り直すしかないな。
間に合えばいいけど…。と思った瞬間、伊那君が笑顔でパソコンの画面をこちらに向けた。
「それなら大丈夫ですよ。データが残ってますから」
「本当かね!?」
「はい。別の案件の資料作りに必要だったもんで。個人的に貰ってたんです」
跳び上がるように立った部長に席を譲り、伊那君は画面を見ながら小さく微笑む。
残ってた?データが?
「う、嘘…?」と信じられない気持ちで部長の横から画面を覗き込む。
すると、伊那君が私の背中を元気付けるようにポンっと叩いて笑った。
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