第12話
ちなみに伊那君は私が社内で仲良く話せる唯一の人間である。
貴重も貴重。
トラブル続きでも会社を辞めなかったのは彼の存在がかなり大きかった。
「実は安久谷さんが明日使う予定の資料をシュレッダー行きにしてしまってな」
「安久谷さんが?珍しいですね。いつも慎重に取り扱ってるのに」
「いや、それが、やったのは川合さんなんだが。彼女に破棄するように指示を出したのは安久谷さんらしくて」
「指示を出した?出したところで破棄をする前に部長から“破棄”の判を押して貰う必要があるでしょう?それはどうしたんです?」
「それは…」
「まさか押したんですか?」
「ない。絶対にあり得ない」
「なら川合さんが勝手に早とちりしてやっただけじゃないですか?彼女、返事半ばのミスが多いですから」
「あぁ、まぁ…」
ガックリと項垂れる部長と話しながら伊那君は自身のパソコンを開く。
そうだ。破棄の判の存在を忘れてた。
『押さずに破棄は厳禁』の規則は会社で最も重要なものである。
知らない筈が無い。
萌のやつ…。伊那君が言ってた通り本当に早とちりだったんじゃない?
私が部長の机を指差してるのを見て『“破棄”の判を押してシュレッダーに掛けといて』と頼まれたと思ったのかも知れない。
確かに萌は話半ばで返事をする時が多々あるし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます