第57話




「……なぁ、涼香」


「うるさいだまれ」


「年々、俺への扱いがひどくなってるのは、俺の気のせいか?」


「気のせいに決まってるだろ滅べ」


「友香ちゃん、どう思う?」


「ノーコメントで」


「……友香ちゃんも、俺への扱いがひどく待ってきたよね。そんなところまで涼香に似なくてもいいんだよ?」


「友香ちゃん! もっと奏にダメージを与えるのよ! メンタルフルボッコ!!」


「おい涼香!? なんてことを言うんだよ!?」


「認めないっ! 絶対に認めない!! 何でこんなやつに!!」


「涼香さん。あんまり否定してると今度は綾に嫌われます。バレない程度にチクチクと地味なメンタル攻撃を的確に行なっていくのが効率よく、且相手に大ダメージを与えることができるかと」


「ちょっ!? 黒幕は涼香じゃなくて友香ちゃんなの!? 俺の味方はどこにいるの!?」



 そう言いながら、草薙さんはシクシクと鳴き真似までしている始末。


 そんな草薙さんに指をさして笑い転げているのかお姉ちゃんで、そんなお姉ちゃんを嗜めるような格好をとりながらさらに煽っているのか友香ちゃん。


 ……え、私ここにいる意味無いと思うの。そろそろベッドに入って寝てもいいと思うんです、なので離してください。



「でも友香ちゃんが大学卒業と共にうちの会社に来てくれたのは本当によかったわー。絶対に仕事できる子とだと思ってた!」


「涼香さんがサンプルなどをたくさん与えてくださったからです。じゃなかったら多分違う所とか受けまくってましたから」


「危なかった! 将来有望株を逃すところだった!!」



 そう言いながら、お姉ちゃんはたこ焼きを突いては口に運ぶを繰り返している。


 机の上にはホットプレートと、たこ焼きに必要具材。それにお酒の空き缶が揃っており、私たちは家で岩つるタコパなるものをしていた。



「なぁー、ほんとひどいよなー……味方は綾ちゃんだけかぁ……」



 そう言って、私を後ろから抱きしめている草薙さんが頭に頬をすり寄せる。その暖かさにどきりとしながらそれでも恥ずかしさで逃げようとしても逃げられないこの状況に、私は混乱しつつもどうしようもないとどこかで諦めているため、大人しくしていることしかできない。


 ぎゅーっと体を包むように抱きしめられて、私は顔を真っ赤にしていることしかできなくて。



「はいアウトー!!」



 そう声が聞こえたかと思うと、お姉ちゃんが立ち上がり素早い動きで草薙さんの背後に回ったかと思うと、背後で「パーンッ!!」ということ軽快な音が響いてきた。

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