第50話
それなのに、それを否定されてしまうと、私はどうすればいいのかわからない。
「私の精一杯の言葉を否定したのは、受け入れてくれなかったのは春翔にぃなのに……どうして私ばかりが責められなきゃいけないの!?」
感情が、爆発する。
「私だって、何度も考えた! でも、私の言葉を受け取ってくれた試しは一回もなかったよ! いつもいつも聞き流して、いつもいつも聞かなかったフリをして、時には怒って! それでもめげずにがんばり続けて、でも結局は、私の初恋を完膚なきにまで叩きのめしたのは春翔にぃ本人じゃない! どうして私が責められなければならないの? どうして私が怒られなければならないの? そんなの、理不尽すぎるじゃない!!」
好き。大好きだった。本当に、どうしようもないほどに。
でも、私にはもう耐えられなかったの。
これ以上、春翔にぃの隣を幸せそうに歩く女の人を見るのが。私ではない違う人に、私には見せたことのない表情を見せるのが。私ではない人を抱き寄せる腕も、囁く声も、伝わる温もりも体温も。
私には、絶対に与えられないものばかりで。
「これ以上は、嫉妬で狂っちゃうよ……私は……もう嫌なの……」
そう、最終的に吹っ切れたきっかけをくれたのは悠里さんだ。電話での会話を思い出す。
あの人と春翔にぃがどうやって出会ったのかはわからないけれど、あの人は、春翔にぃと一緒になることを信じて疑っていなかった。だからこそ、牽制の意味も含めて、私にあんな電話をかけてきたのだろう。
聞きたくないことを言われ、否定したのに信じてもらえず、さらに酷い言葉を打ち付けられる。
永遠のループして彷徨っている感覚だった。
「私のことを思うのなら、春翔にぃは私ではない人をちゃんと好きになって、その人をちゃんと見てあげてよ……私のことばかりに構おうとするからうまくいかないのに、どうしてそれを受け入れてくれないの? 私はもう、春翔にぃへの気持ちはないの。だから……お願いだから……私の手を離して。私ではない人を……ちゃんと見てあげてよ……!」
こうやって、涙ながらに訴えても、もしかしたら伝わらないかも知れない。
どれほど思いを伝えても、どれほど訴えても、それは無意味なのだと思い知らされる瞬間は必ずある。
私は、それを思い知らされた。
春翔にぃへの“好き”の感情は、真っ向から否定されて、これ以上私にどうしろというのだろうか。
「……ねぇ、君さ。何を勘違いしてるんだ?」
声を出したのは、草薙さんだった。
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