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第42話
友香ちゃんの後ろに隠れるようにしている私は、周りから見れば滑稽以外の何者でもないだろう。それでも、隠れなければやっていられなかったのだ。
友香ちゃんのところに逃げ込んでから、私は友香ちゃんと色々と話をしていった結果、やっぱり草薙さんに恋しているという結末に落ち着いてしまった。それならば、逃げてばかりもいられないという友香ちゃんの説得に渋々頷き、この面会に持ち込まれた。と言っても、友香ちゃんはちゃんと私の意思を尊重してくれたし、無理やりでは決してない。私の気持ちが落ち着くまで待ってくれた。
そんな友香ちゃんに頭が下がる思いというか、もう頭を下げ続けなければならないような感覚に陥りながら、私はそのお返しとして朝食と夕食をきちんと作らせてもらった(と言っても簡単なものしか作れないけれども……)
「綾、大丈夫だから」
「……でも……」
「自信持ってっていうのもおかしいけど、もし綾の最悪の事態になったらわたしが引っ張ってでもここから連れ出してあげるから。安心しなさい」
「友香ちゃん……なんでいい人なの……」
「こんな性格だから、彼氏なんていても長続きしないけどね」
「それは相手の見る目がないんだよっ! 有料物件間違いなしなのにっ!!」
「……有料物件って……綾、言い方……」
「もしもの時は私が友香ちゃんと結婚する!!」
「……………喜びたいけど喜べないわ」
そう言って遠い目をしてしまった友香ちゃんにぎゅうぎゅうと抱きついて、私はそのままずるずるとコーヒーショップカフェに入店したのだった。
二人でとりあえず飲み物を買うためにレジに並びつつ、ショーケースの中にある美味しそうな新作ケーキに視線がガン止まりになっていたのを見かねてか、友香ちゃんがため息をつきつつ、ケーキも一緒に頼んでくれた。
いいのかと言う視線を送れば、
「別にいいんじゃない? 話し合いなのには変わりないけど、食べたいんでしょ? それに、綾が食べてるからって不機嫌になったりする人たちでもないでしょう」
という、ありがたいお言葉と共に、トレーにのった飲み物とケーキを運んでくれるのを慌てて私がかわろうとしたら、「綾が持つと落としそうだから嫌だ」とバッサリと言われてしまい、しょぼんとしたまま後ろをついていくことしかできなかった。
二人はまだきていないのかと店内を見回したけれど見当たらず、私たちはとりあえず四人がけのソファー席を席取りも兼ねて座る。
甘いカフェオレ(コーヒー長く苦くて飲めないのよ……)をちびちびと飲みつつ、ケーキをつつき食べながら、たまに友香ちゃんの口にも入れて、緊張を紛らわすように待っていると、待ち人ではない人が、目の前の席にどかりと腰を下ろした。
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