第37話

「まず、幼なじみの行動。それは綾に対してなんらかの執着に見えるわ。それが綾を妹として扱っているのか、女として扱っているのか、わたしには分からないけれど、それでもこれからも十分に注意した方がいいと思う。これからは講義がない時でも一人にならないようにした方がいいと思うから、わたしと同じように一緒に講義を受けた方がいいわ。

 次。綾が見せられたその光景は、その幼なじみが謀ってその場面を見せた可能性が高いわね。周りの声も、その幼なじみの声も、関係なく考えないようにした方がいいわ。綾が辛い思いをする必要なんてどこにもないと思うもの。綾の気持ち次第だとは思うけれど、一度きちんと離したほうがいいわ。もちろん、涼香さんと草薙さんとね」


「……友香ちゃん、私がモヤモヤしてたこと全部言ってくれた……」


「人に話したことで冷静になれたのね。綾の中での疑問もこれで少しは解消できたかしら?」


「……うん、ちょっとは……」


「……話はできそう?」


「それは嫌。怖い。無理」


「だと思った。少しの間、ここにいたら? 大学にも一緒に行こう。服も貸してあげる。下着は無理だからネットで頼んで。バイトに関してはまだ休みをもらえそうならお休みをもらっておいた方がいいわね。できそう?」


「電話で、もう一度相談してみる……というか、もうやめようかな……こんな長期間休んでいるのも申し訳ないし……」


「それは綾が決めることだからわたしは何も言わないわ。辞めるも辞めないも綾の自由だと思うわ」


「……友香ちゃんが優しすぎて……また涙腺が崩壊しそう……」


「泣けるときに泣いておきなさい。受け止めてあげるから」



 そういって両腕を広げてくれた友人に、わたしは躊躇なく飛び込んでそのままもう一度涙を流した。







 どれほど辛いことがあっても、朝は来る。


 それでも私がこうしてある意味心穏やかに目覚めを迎えられたのは、昨日、私をただひたすらに甘やかしてくれた大切な友人のおかげだと、理解している。


 そっと起き上がり、悪いとは思ったけれど勝手に冷蔵庫を開ける。さすが女の子。材料はしっかりと揃っている。私は辺りを見回して食パンを見つけるとそれを手にとり簡単に焼こうかなと思ったけれど、そのすぐそばにサンドメーカーを見つけ、予定を変えてホットサンドを作ることにした。


 もう一度冷蔵庫を開けて挟めそうなものを取り出し簡単に切ってからサンドメーカーをコンセントに刺して、温める。適温になってから挟んで焼けるまでしばらく待つ。


 それを作り終えてから半分に切り、お皿に持って、ついでにミニトマトを添えておいた。


 それから、スープを簡単に作り、ついでにフルーツ缶があったためそれを開けてヨーグルトと簡単に和える。


 それら全てが終わってから、友香ちゃんが起きてきて、食卓を見て目を見開いた。



「材料を勝手に使ってごめんね! 今日、帰りに一緒にスーパーに行こう?」


「……それよりもなによりも、こんな豪華な朝食にわたしは驚いている……」


「?」



 そうして、私たちは食卓につき朝食を一緒に食べたのだった。

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