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第23話
「わたしはいいと思うけど? 草薙さん」
友香ちゃんの発言に、わたしは飲んでいた飲み物を思わずごふっと少し吹き出してしまう。……いやいやいや、流石にダメでしょう、それは!
「だって、あの人いい人そうだったし。ま、あれからわたしはほとんど会ってないからなんとも言えないっちゃ言えないけどね。でもすっごい常識人だったよ? 綾の幼なじみだって言ってたあの男より、よっぽどいい男だと思うけど?」
「……身もふたもないことを言わないで、友香ちゃん……」
「なんで? 大切にされてるんでしょ?」
「それは私がお姉ちゃんからの預かり物だからってだけだから! むしろ迷惑かけているのを自覚している私は居心地が悪いよ……!」
「なんで? 甘えればいいじゃん。めちゃくちゃ甘やかしてくれそうだけど。涼香さんといっしょで」
「ダメ人間になっていく……!!」
頭を抱えて机に突っ伏した私に、それでも友香ちゃんは追い討ちをかけてくる。
「あの粘着質ストーカーのことはすっぱりと忘れて次を見つけなさい。有料物件がすぐそばに転がっているんだから」
「言い方!!」
しかし、私自身、あの人に惹かれはじめているのは全く持って否定ができない。
だって、あの人本当にいい人なんだよ!?
朝起きれば大体私よりも早く起きていて朝ご飯作って待っていてくれるし、朝からあの爽やかな笑顔で「おはよう、綾ちゃん」とか言われるんだよ!?
ご飯も美味しいし! 気遣いもバッチリで、夜お風呂に入る時とかも(まぁ大体仕事で遅くなるっていうのもあるけれど)私を一番風呂に入れてくれる。以前、申し訳ないから家主である草薙さんが先に行ってくださいと言ったら、「女の子だから男の僕が入った後のお風呂って入りづらいでしょ? 気にしなくていいから、先にどうぞ」といって、さりげなく私を洗面所に押し込んだこともある。
申し訳なさすぎて慌ててシャワーだけ浴びて出て行ったら、「ちゃんとお湯に浸かってきた?」と言われて、とにかく申し訳なさすぎてそんな余裕はありませんでしたとなぜかそこで馬鹿正直に言ったら、もう一度ちゃんと体を温めてきなさい、と再び洗面所に押し戻されたのは記憶に新しい。
どうしようかと思ったけれど、たぶん誤魔化すことはできないだろうなということで、私はもう一度今度はきちんとお湯に浸かって体を温めてお風呂をいただいた。
おずおずとリビングに戻れば私がきちんとお湯に浸かったのを理解したのか、おかえり、と笑顔で言ってくれて、ありがとうございますと返せば手招きされて首を傾げながら近づけば、「髪がまだ濡れているよ?」といって、私の髪をタオルで優しくわしわしと拭いてくれた。
………お分かりだろうか。ここまでされて絆されない相手はいないと思うのよ。
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