第21話

結局。あれから散々お姉ちゃんと草薙さんが言い合いというなの話し合いをして私は草薙さんのところのお世話になることとなった。……あれ、何で私の意見は反映されないんだろう。解せぬ……。


 友香ちゃんは途中から我関せずを貫き通して、話が固まった頃合いを見計らってそのまま自分の寮の部屋に戻っていってしまった。「じゃ、また明日ね」と何とあっさりとした挨拶をされて私はそれ以上なにもいえなかった。


 ……うん、さすが友香ちゃん……。


 そんな現実逃避をしつつ、私も気づけば知らないマンションまで案内されていて。


 …………本当に私、草薙さんのところにお世話になるのか。正直冗談だと思っていたよお姉ちゃん。いや、そんなレベルで済む言い合いというなの話し合いではなかったけれども。それでも、もう少し私の意見を反映してくれてもよかったのではなかろうか……。



「綾ちゃん、降りれる?」


「……はい…大丈夫です」



 そして、私は結局この人と一緒に行動することになっている。


 いや、正直私の方が居候となる身なんだからなに言ってんだよって話にはなると思うけれども。けどさ、もうちょっと意識してもいいんじゃないかな?


 私も一応大学生。大人という分類に片足突っ込み始めているんだからもうちょっと私にか玉買ってくれても良いと思うのよ…っ!!



「ここが僕の家ね。これは合鍵。一応、公共交通機関を使えば大学に行けるけど、寮とは違って多少時間はかかるから家を出る時間とかは気をつけてね。まぁ、行きは僕が送ることになってるから大丈夫だと思うけど、仕事の都合とかもあるから、朝早くになる時もあるのは勘弁してね」


「……」


「帰りは申し訳ないけど、たぶんほとんどは自力で帰ってもらうことになるから、合鍵ね。まぁ、友香ちゃんが途中までは一緒に帰るって言ってくれてるから大丈夫だと思うけど、一応用心しながら帰ってくるように。今時とか言われるかもしれないけど、これは防犯ブザー。あって困ることは絶対にないから持ってて。危なくなったらちゃんと鳴らすんだよ? あとは家事全般のことを決めておかないとね」



 …………もうついていけなくなってきたぞ、私。


 とりあえず両手で受け取った防犯ブザーは鞄の中に入れておこう。キーホルダーみたいにしたらどっかにひっかけて鳴らしてしまう可能性があるのを私は知っている。


 そして、行きは自力で行くことはほとんどないと。……なんかごめんなさいね。というか、一人で行っていいなら全然一人で行くんだけど。たぶんそれは許されないんだろうな。


 帰りのことはたぶん、譲歩された結果なんだろうなと思う。いい年下女の子を迎えに行くために仕事抜けますなんて言えるはずもないしね。まぁ、私としては別にいいんだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る