第16話

「ま、待ってください。本当にそんな迷惑かけられませんので…っ! それに私はそんな貯金ないし、返せないです!!」


「大丈夫。涼香が綾ちゃんの必要になるためのものを買うためにって、僕にカードを渡してくれたから」


「なんということしてるんだ姉!! というかカードホイホイ渡さないで!! こわいっ!!」


「流石にそれは受け取らなかったけどね。常識的に考えてありえないしね。だから、必要なものを先に僕が買って、後から涼香に請求することで落ち着いた」


「それもそれで問題っ! お姉ちゃん!! 私そこまで迷惑かけたくないよ!!」



 再びスマホのスリープを起こしてお姉ちゃんに電話を入れる。しかし出ない。…………仕事がこれほどまでに腹立たしいと思ったことは今までになかったよ!!



「まあ気にしないで。涼香は本当にシスコンだから。綾ちゃんのためになんでもするよ、あいつ」


「……可愛がってもらっているのは理解してるつもりですけど、そこまで迷惑かけたくないですよ……可愛がってくれてるってわかっているからこそ尚更。甘やかされて、それを当たり前だと思いたくないじゃないですか」



 思わずぽろっと出た本音に、草薙さんも友香ちゃんも少し笑ったような気配を感じで顔を上げれば、事実二人は少し苦笑のような表情で私を見ていた。



「……私、なんか変なこと言った?」


「その自覚があるからこそ、涼香さんは綾を可愛がってるんでしょ?」


「そうだね。涼香が綾ちゃんを可愛がってる理由がすごくよくわかったよ」



 理由が私にはわからん! けど今はそれどころではない。



「それよりも、目下の問題はルームシェア!」


「そういえばそんなこと言ってたわね。それ、どういうことなの?」



 友香ちゃにそう聞かれて、私は昨日の夜の出来事を友香ちゃんに話す。もちろん、スマホの件も話をしなければならないため、ちょっと口ごもりながらの説明にはなったけれど、結局洗いざらい話すことになったのはしょうがない。ごまかそうともごもごとしたら友香ちゃんの笑顔に全てを吐き出さなければ危ないと思ったのは仕方がないのです。


 全てを話し終えて、私が小さくなる。



「………綾、それは涼香さんの判断が正しいと思うわよ?」


「………そうだね、僕もそう思うかな」


「草薙さんは詳しいことは聞いていなかったんですか?」


「そこまで詳しいことは聞かなかったんだよ。昨日は夜も遅かったし、涼香が今日仕事だったからね。大雑把に話を聞いて受けたんだ」


「その状態でよくそのお話を受けようと思いましたね。その事実の私がびっくりです」


「涼香が頼ってくるぐらいだから自分ではどうにもならないことなんだって理解できたからね」



 ……え、なんかよくわからんけど、お姉ちゃんのおかげでルームシェアが成立してしまったということなんだろうか。

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