臆病者は愛を受ける

３

第15話

「突然拉致みたいな感じになってしまってごめんね。涼香にある程度は聞いていたけれど、……まさかあそこまでとは思っていなかったから。助けるのが遅くなったのも、本当に申し訳ない」

「別に草薙さんが悪いわけではないんですから気にしなくてもいいんじゃないですか？　というか、むしろわたし達は助かりましたし」

「そっか、よかった。あ、それと君のことも、勝手に名前で読んでしまって、ごめんね」

「あ、気にしてません。ちゃんと自己紹介もしてもらってので」

「ならよかった。それよりも、綾ちゃんは大丈夫？」

「……まだ理解追いついてない感じですねぇ……」

「そっか。突然だったし……悪いことしたなぁ……」

「いえいえいえ。あのままの方が危なかったですから。むしろ救世主的な感じでしたよ。ありがとうございます」

　……友香ちゃんが誰かと話してる。うん、現実逃避してる場合ではないよね。いや。それよりもお姉ちゃんに連絡。流石にこれは文句言ってもいいはず！！

　私はさっとスマホを取り出してお姉ちゃんに電話をかける。しかし、今の時間は残念ながらお姉ちゃんは仕事。電話に出られるはずもない。

「なんで！？」

「あ、漸く戻ってきた」

「友香ちゃん！　なんでそんな冷静なの！？」

「助けてもらってしねぇ。それに、既に寮に着いているにもかかわらず綾が突然自分と二人になったら怖がるだろうからって言ってわざわざわたしに頭下げて頼んでくれた人を無碍にするほどわたしは薄情な人間ではない」

「………ごめんなさい。……あの、本当に助けてくださってありがとうございます」

「いやいや。こっちも突然抱きしめたりしてごめんね。でも、ああいう輩は突拍子もない行動に弱いからね。勝手な判断で申し訳なかったけど」

　いや、私は心臓がどうにかなりそうな感じでしたよ。助けてくれたのは本当にありがたかったけれど…。

　それよりも確認しなきゃいけないのは……。

「あの、姉がもしかして何か違うこと頼んだりしてませんよね？」

「涼香から聞いてるのはルームシェアのことまでだけど……他に何かあった？」

「それが問題っ！！　お姉ちゃん！！　電話！　お願いだから電話出てっ！！」

　私はまだだと分かっていてももう一度お姉ちゃんに連絡をする。しかし無情にも流れてくるのは留守番電話サービスに繋げられる電子音。

　……お姉ちゃんんんん！！

　私は諦められなくてスマホを手に持ったまま運転席に座っている人を見つめる。

「……あの、ルームシェアはなかったことにしましょう。流石に申し訳ないです。無理です。こんなご迷惑をかけられませんからっ！」

「でも、僕のすんでいるところの一室は君のために一部屋開けたよ？」

「行動早いですね！？　昨日の夜決まってたんですよね！？」

「もともと使っていなかった空き部屋を簡単に掃除しただけだからね。ベッドとかはないから布団になるし、机とかもないからまたお休みの日に買いに出かけようね」

　なんかさらっと重大なことを言われた！！