第14話
春翔にぃもイケメンだけれども、それと同じくらいかっこいい人。違うのは、春翔にぃはどちらかというと王子様系のイケメンだけれど、今わたしに駆け寄ってきている人はど力というと騎士風的な?
あ、こんな表現なのはわたしは昔からそういうファンタジー小説が好きだからです。いいじゃん、仮想小説。面白いよ。
と、ちょっと脳内で現実逃避していると、その人が完全に近寄ってきて。
あれ、なんかめっちゃ距離近くないか? そんなに近くなくても問題はどこにもないと思うんだけど……、えっと……。
え、え、え?
「綾ちゃん、大丈夫?」
そう言って、その人は。
フワッと、私をまるで包み込むように。
優しくその両腕で抱きしめた。
………えええぇぇぇぇえええっ!?
何事!? ちょ、まって! 理解が追いつかない!!
と思っているのはなにも私だけではない。そばでその一連を見ていた友香ちゃんも、私の腕を掴んでいる春翔にぃも、なにが起こっているのかわかっていないらしく、ぽかんとしている。
いや、正直私を助けて、という感じではあるんだけどね!?
しかし、そうやって私たち三人が呆けているのを見逃さず、私を抱きしめてくれている男性はするりと力が弱くなった春翔にぃの手から私の腕を救出して、距離を取る。ぐっとさらに強く抱きこまれて、私はすでにパニックからの放心になり、されるがままである。
「ごめんね、綾ちゃん。探すのに手間取っちゃって」
「……」
「それで、君が綾ちゃんのお友達の友香ちゃんだね?」
「あ、はい」
「急で申し訳ないんだけど、君も僕の車に乗ってくれるかな? 寮は近いとは聞いていたけれど、流石にこんな時間まで待たせてしまったのは申し訳ないからね」
「……じゃあ、お言葉に甘えます」
「うん。それじゃあ、車までいこっか」
「はい」
私を置いて会話がどんどん進んでいる。
「ちょ。待った! あんたは誰なんだよ!?」
「それは、今の君には関係ないだろう? それとも、君と綾ちゃんは血縁関係でもあると?」
「血縁はないが、俺は綾の保護者のようなものだ!」
「残念。綾ちゃんには涼香がいるね。僕は涼香に頼まれたものだ。君には関係ないね」
「ぐ……っ!」
「じゃ、もう遅いから。帰るね。友香ちゃん、いこう」
「はい」
そう言って、私はその人の腕から解放されたけれど、そのまま優しく手を握られ、一緒に移動することになった。
……………お姉ちゃん。説明不足が過ぎませんか……?
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