第12話

お昼ご飯を友香ちゃんと食べてから、友香ちゃんはどうやらこのあとは特に講義もなく暇らしいのでこの食堂で待っているとのことだった。私はそれならと、コンビニで少しお菓子を買って友香ちゃんに渡す。気を使わなくてもいいのにとは言われたけれど、この後暇な時間を友香ちゃんに与えてしまうのは申し訳ないため、少しでも暇つぶしができればと言う意味も込めているのできにしないでといえば、じゃあとそのまま受け取ってもらった。


 私も講義に参加するために鞄を持って講義室にそのまま向かったのだった。


 最終コマも無事に終わり、私は友香ちゃんにメッセージを入れようとスマホを開いて、少し固まった。


 流石に他人の持ち物から連続して連絡を入れるのはできなかったんだろうけれど、違う番号で何度か私に連絡を入れようとしていたらしいと言う証拠が私のスマホの画面にうつている。



「……ここまでするのはなんの意味があるの……?」



 私の気持ちを知っているくせに、私の気持ちを無視して、彼女を次々と紹介し、数日で別れを繰り返して、無駄な希望を持たせておきながら、ついには婚約者である悠里さんを紹介してきた。


 どれだけ私の気持ちを弄べば気が済むのかと本当は言いたい。けれど、それがもし悠里さんの耳に入っらた、申し訳なさで私の方がどうにかなってしまう。


 スマホの画面をしばらく見つめて、私はそのまま友香ちゃんにメッセージを入れる。


 そのまま食堂まで降りて友香ちゃんと合流し、私はお姉ちゃんからの連絡を待つ。


 時間はすでに7時30分になり、外はもう暗くなっている。



「友香ちゃん、ごめんね。付き合わせて……」


「気にしないでって言ってるのに。そんなにも気になるのなら、今度わたしにお菓子作ってきてよ」


「そんなことでいいの?」


「綾の作るお菓子好きなのよ。わたしも」


「友香ちゃんにそう言ってもらえるのは、すごく嬉しい。じゃあ、紅茶のシフォンケーキとか作ってこようか?」


「え、めっちゃ嬉しい」


「本当? じゃあ、作って持ってくるね。ちなみに、ピースに切って持ってきた方がいい? それともホール状態?」


「ホール状態で」


「……みんなそう言うんだよねぇ……」



 なんでだろうと思うけれど、美味しいと言って食べてくれるのは嬉しいため、友香ちゃんの言葉に頷いて約束をした。


 と、ちょうどお姉ちゃんからメッセージが入り、迎えの人がそっちについたと連絡が入ったから、友香ちゃんと一緒に外に出てー、と言う文字を見て、それを友香ちゃんにも見せて私たちは一緒に校舎から外に出る。


 いるのなら多分車を止められるところだよー、とお姉ちゃんからおってメッセージがきたため、二人して辺りを見回しながら歩いていると突然、わたしの体が後ろに引っ張られた。

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