第10話
「あいつのアドレスとか番号とかも消しておきましょうか。いい?」
「え、あの……」
「……とりあえず、綾の判断ではなく、あたしの判断で消したってことにしておくわ。綾との連絡が完全に断てれば、あいつもあたしの方に連絡せざるおえないんだから」
「な、なんかごめんなさい……」
「気にしない気にしない。……さて、これでよし! と。綾、夕飯はちゃんと食べた?」
「ちゃんとって言われると微妙だけど……食べたよ。お昼に残ってたお味噌汁と、あとは適当に炒めた野菜」
「食べたのならいいわよ。それよりほら。チーズケーキ」
「本当に買ってきてくれたの!? わ、ありがとう、嬉しい!」
「それはよかったわ。じゃ、食べなさい。今日ここに泊まってもいい?」
「うん、もちろん!」
「じゃ、お風呂借りるわね」
「はーい」
そう言って、洗面所に消えていくお姉ちゃんの背中を見つめながら、私はガサガサとコンビニの袋からケーキを取り出す。
包みを丁寧に空けながら、私はそれにかぶりついたのだった。
お姉ちゃんが眠るようのお布団を床に敷いて、私はお風呂から上がってくるお姉ちゃんを待つ。正直、今はスマホを手に取るのがある意味若干の恐怖になっているため、本棚に挿してあった漫画を手にとってそれをパラパラと見ているだけだった。
しばらくしてからお姉ちゃんがお風呂から上がってきて、そのままスマホでどこかに連絡を入れているのを見つめる。
そんな私の視線に気付いたのか、お姉ちゃんが、一度スマホを置いて私のそばに寄ってきた。
「今からちょっと頼めそうな人に頼んでみるね、綾」
「……さっきの、引越しのこと? 別にそこまでしてくれなくても、本当にいいんだよ? なんとか、頑張って逃げるから……」
「それができないから、頼むの。いい?」
「……お姉ちゃん、笑顔が怖い……」
「わかった? 綾?」
「わ、わかった、わかりました、いう通りにします……」
「よし! いい子ね、綾。さ、もうおやすみなさい?」
「……うん。あの、本当に無理しないでね。本当の本当だよ?」
「大丈夫。あ、でも確認。ルームシェアみたいな感じになっても問題ないかな? 流石に一人でまた部屋を借りさせてっていうのはあたしも不安だから」
「うん。大丈夫だよ。相手の人に迷惑がかからなければの話だけどね?」
「OKOK! まっかせといてー!」
……心なしか、お姉ちゃんがウキウキワクワクしているように見えるのはなんでだろう……。
ちょっと不安になりながらも、私はそのままお姉ちゃんに任せることにしてベッドにモゾモゾと潜り込んでそのまま眠りについたのだった。
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