第4話

あ、ただ今私たちはお姉ちゃんの車で移動中です。流石に歩いて大学に行っていたら、行く途中で春翔にぃに見つかって、そのまま強制的に車に詰められて大学に強制連行されるという未来が見えたからだ。流石にそれは嫌だ! ということで、ダメ元ではあったけれど、お姉ちゃんに連絡を入れたら「いいよ〜、準備して待ってな〜」とご返信をいただいたのでそのままお言葉に甘えたということである。たまたま休みだったらしいので、結構ラフな格好で現れたにもかかわらず、美人さんなお姉ちゃんの登場に友香ちゃんは驚いていたけれど、私が結構無理やりにお姉ちゃんの車の中に押し込めたため、少し不機嫌だったけれど、ちょっとは機嫌を直してくれたらしい。


 そのことにほっとしつつ、春翔にぃのことを考えてため息を吐き出してしまう。


 それをお姉ちゃんが拾ってしまったらしい。



「綾、自分で不毛な恋をしているとわかっているのなら、早々に諦めさない?」


「わかってる……わかってる、つもりなんだけど……」


「ま、初恋だったって言うのもあって、拗らせているのはわかるけれどね。でも、今もなお辛い思いしているのは綾なんだよ?」


「う……っ」


「ま、あたしは綾の味方だから、頼ってくれてもいいけどね」


「……ごめんね、お姉ちゃん……」


「今度、あたしのためにケーキ焼いてくれる?」


「も、もちろん! でもできれば実家に行きたくないから、こっちに来てくれると嬉しいです……!」


「それはもちろん当たり前。実家で作ってくれても、あたしの口にはほとんど入らなくなっちゃうもん」


「あー、お母さんもお父さんもなぜか私が作ったやつは食べてくれるもんね……なんでなのかよくわからないけど……?」


「ま、お母さんお父さんだけならいいんだけどね……」



 最後に何かをポツリと呟いたお姉ちゃんの言葉の意味が分からなくて首を傾げていると、お姉ちゃんがニコッと笑った。それにさらに首を傾げていると後ろから友香ちゃんに「綾、気にしない」と突っ込まれて「あ、うん」と頷くことしかできなかった。



「友香ちゃんは察しが良くて助かるわぁ〜」


「なんとなく、今までの涼香さんの努力が見えてきました」


「ま、本当に察しのいい子で助かる! これからは友香ちゃんも巻き込んじゃうけど、いいかしら?」


「出来る限りの事はしますけど……あまりあてにしないでいただけると助かりますが……」


「人それぞれにできることできないことがあるのは当たり前でしょう。そんなに重く受け止めないで」



 二人の会話を聞きながら、私は窓の外を見る。流れる景色は、私の目にははっきりと映らない。



(私が春翔にぃに伝えてきた気持ちも、きっとこんなふうに簡単に流されていたんだろうな……)



 そう考えると、胸が締め付けられた。

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