第73話

「妹は妹でも妹分ね」


「あぁ、なるほど…」


「でも、お兄ちゃんが言ってる妹は私の方だから」


「はい?」


「本物の妹は私」




熱心に自分はクゲ君の妹だと解説する少女。


頭の中が『?』になりながら簡素なベッドから起き上がる。



あなた名前は?クゲ君は?って疑問でいっぱい。


しかし、妹の違いについて語る少女は答えてくれそうにない。




「ちなみにお兄ちゃんが見せたあの写真の妹も偽物だよ」


「え、」


「全員ただの居候先の子供。本当のお兄ちゃんの兄弟はお兄さん1人だけだから」


「何それ。なんで、そんな嘘…」


「だって浮気とか疑われた時に便利じゃん。ボロが出ても相手は小学生の妹だって勘違いさせてたら皆、黙るし」




だから利用させて貰ってる。その点、自分も同じようなものだけど。と、信じられない話を当たり前のように言いながら、クゲ君の妹はニコリとも笑わずにベッドに座る。



『お兄ちゃんの言う妹はペットであり仲間みたいなものでもある』と、クゲ君と自分の関係性についてペラペラと私に話す少女の瞳は完全に冷めてて暗い。



長らく閉じ込められて病んだペットみたいに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る