第69話

「……この手は?」


「一応、今日の1位だし?」


「何じゃそりゃ」


「少しはイチャついとかないと怪しまれるじゃん」


「誰に?」


「勝負してたことを知ってる他の人に。俺らがズルして勝ったんじゃないかって」




もっともらしいことを言い、クゲ君は重なった指を更に深く絡めた。




そこから歩きつつ少し会話。



クゲが言う話によると、結局マキちゃんは店に居なかったらしい。


全席見て回ったけど、姿はどこにも。


だから今日のマキちゃんっぽい誰かは、ただ雰囲気が似てるだけの別人だったんじゃないかと言われた。



「そっか。残念」


「きっとまた来るよ」


「だといいな」





そして、空が少し明るくなりつつある頃。



駅に向かって歩いていると、クゲ君がふと私の名前を呼んだ。


「何?」と顔を向けた瞬間いきなり唇を奪われる。



そして、



「好きだよ」




と、何の悪気もなさそうに、ふわっと笑ってそう言った。



驚いてる間もなく腕を引かれて距離を詰められる。

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