第68話

「でも、それじゃあ、また借金が増えちゃうんじゃない?」


「大丈夫。掛けにして貰って他の日の売り上げで相殺するから」


「えー…」


「ついでに他の席も見て回ってマキちゃんが居ないかも見て来るし」


「ほんと?」


「うん」




本来の目的を私の前にぶら下げてクゲ君は「だからいい?」と聞いてきた。



だから「いいよ」と返してしまった。



ヤメておけばいいのに。





「やったー。ありがと、キリちゃん」



嬉しそうに微笑んだクゲ君は直ぐさま他の従業員にボトルを頼んだ。



そこから止まることなく、目の前のテーブルには次々とボトルが置かれていく。


本当にこれ大丈夫なのかな…と思うくらい。



だけど、閉店の時間になってもお店の外に出ても私がお酒代を請求されることはなかった。



勿論、1番売り上げが高かったのはクゲ君の策略通り私の席。



行かなくて済んでよっぽど安心したのか、仕事を終えたクゲ君は機嫌が良さそうに店から出てきた。


 

先に店の外で待ってた私の手を掴んでふらりと軽い足取りで歩き出す。

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