第67話

「意外と?人気なんだね」



離れて貰うのを諦め、今日来て思った素直な感想をクゲ君に述べる。



もっとこう大人しい感じだと思ってたのに本当に意外だった。



この分じゃお店に前借りした分も直ぐに返せるんじゃないかと思う。




「違うって。今日は特別」


「そうなの?」


「そうだよ。たまたまお客さんが被っただけ」


「そっか。でも、それにしても凄いじゃん」


「んー、まぁ、みんなプライドの張り合いみたいになってるからね」


「1番の子は誰みたいな?」

 

「そう。今日1番お金を使った人が俺とアフターに行ける…って話になってるらしい」




ゆるゆると力なく顔を上げるとクゲ君は元気なく笑った。



行きたくないなー。困る。また変な噂を立てられるし。普通に帰りたい、って。




「断れないの?」


「さすがにあれだけ派手にやられるとね…。断りづらい」


「そっか」


「でもな…、やっぱ困る。対応に気を使うし」


「うん」


「だからさ、ここのテーブルにボトルを入れていい?」


「え、」


「俺が全額払うし。形上キリちゃんが1番ってことにしとけば行かなくて済むから」




この席で休憩も出来るし、売り上げも作れるし、それにどうせ行くならキリちゃんとが良い…、とクゲ君は熱く語り出す。



それこそ必死に顔の前で両手を合わせて「お願い」と子犬みたいな顔で。



もう飲めないんだよ…と弱々しく頼んでくる。

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