第47話
なーんだ。
やっぱりあの写真の子供達は本当の兄弟だったんだ。
偽物とか、お客さんの子供とか、そんなのあり得ない話。
「それで?俺はキリちゃんのことを弟になんて紹介すればいい?」
「え?」
「俺の彼女、って紹介していいの?」
クゲ君が私を見つめて言う。
さっきの告白の返事を催促されてるのは聞くまでもなかった。
正直、少しだけ迷う。
付き合ったら楽しそうだし。
だけど、やっぱり“うん”と頷くことは出来ずに首を横に振る。
「いや、そこは友人Aとして覚えて帰って」
「ぶはっ。兄ちゃん望み薄〜」
首を横に振った私に弟君は吹き出しつつも苦々しく笑う。
そこから少し会話が続き、電車が次の駅に向かいだした頃、弟君は「乗り換えなきゃ」と足元に置いていたリュックを背負った。
ドアの前に立ち、私の隣に居たクゲ君に顔を向ける。
「兄ちゃん。さっき頼んだやつ」
「あぁ、靴代な」
「ごめんね。いつも」
申し訳なさそうに、しかしヘラヘラと笑い、手を差し出す弟君。
クゲ君は困ったように笑うと鞄から取り出した封筒を弟君に渡した。
車内アナウンスが入り、電車の速度がゆっくり落ちていく。
「じゃあ、またね。兄ちゃんとお姉さん」
駅に着くと弟君は私とクゲ君に手を振り、渡された封筒を握り締めて電車を降りていった。
人混みの中、駅の階段に向かって歩いていく弟君の背中。
背負うリュックに書かれた名前はペンで黒く塗り潰されていた。
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