第14話

「うん。そうだよ」


「それだけで足りるの?」


「あー…、まぁ…」



思わず尋ねた私にクゲ君は苦々しい笑みを浮かべた。



口数まで少なくなっちゃって、物凄く聞いて欲しくなさそう。


振っちゃダメな話しだったのかな。




「ごめん。余計なこと言った?」




気まずさから謝るとクゲ君は否定するように首を横に振った。


 

違う、違う。そんなことない。全然、大丈夫。気にしないで、って。



そして自身の家庭事情についてポツリポツリと話し出した。




「何ていうかさ…。実はうち7人兄弟で…」


「えぇ?多いね」


「そー。だから生活費とか結構カツカツで。食費にまで金が回せないんだよ」


「そうなんだ…」


「うん。一応バイトはしてるんだけどねー。学費も払わなきゃいけないし、親父の借金の返済もあるから…」




なかなかねー…と、クゲ君は寂しげなお弁当箱にお箸を運びながら俯きがちに呟く。



聞いた私はそりゃビックリ。



ってか本当かな…。


嘘じゃなく?



だって、じゃあ、お金にルーズでギャンブル好きで人から凄い巻き上げてるって、あの噂は?



しかもそのバイト先のホストクラブで上手くいっててNO1なんでしょう?



いくら何でもお昼ご飯代くらいあるんじゃ…と、疑う私にクゲ君は苦笑いを零す。

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