第12話

「あ、そう言えば…」



周りの視線から気を逸らそうと、さり気なく話題を好きなインディーズバンドの話に移す。



自分が夢中で語れるものと言えば、それしかないから。



とはいえ、あんまり有名じゃないし、言っても分からないかな…と思ったけど、クゲ君は首を傾げることなく、人懐っこい顔でふんわりと笑った。




「俺もそのバンド好き」


「え、知ってるの?」


「うん。路上ライブしてた頃とかよく見に行ってた」


「うわ、懐かしい〜」


「新曲もいいけど、デビュー前に出した曲もいいのいっぱいあるよね」


「おー、分かってるね」




合わせてるだけかな…と思いつつも、自分の好きなものが理解されて、ついつい笑顔になってしまう。



凄い好きなバンドだけど、皆知らないし、奨めても興味がないと言って聞いてくれなかったから。



語り合える人が現れて、ちょっと嬉しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る