第76話

と。



『ステラ、甘いもの頂戴』


「わっ、風のエレメント様っ!?」


『甘いもの』



 するりと私の後ろから首に手を回して抱きついてきた風のエレメント様は、なぜか人間世界の甘いものがお気に入りらしく、だいたいこうやって強請ってくださる。


 私は少しだけ待ってもらってから部屋に常に置いてあるお菓子の入った器を持って風のエレメント様に差し出す。


 すると、風のエレメント様は嬉しそうに器の中に入っているお菓子を両手で大切そうに持ちながらもぐもぐと咀嚼している。



(……小動物みたいで可愛い……)



 いつも思ってしまうことを思ってしまう。


 私はこの時のこの感情も、エレメント様に伝わっているとはツヤにも思っていなかったのだった。



『ステラ。もう夜も遅かろう。早く眠るといい』


「あ、土のエメレント様。はい、わかりました。ではお言葉に甘えてお先に眠らせていただきますね」



 そう断りを入れて、私は宙にふわふわと浮いている四大元素のエレメント様たちに「おやすみなさい」といってそのまま意識を落としたのだった。





ステラが眠ったのを確認したエレメントたちは大きくため息をついた。



『あの構い方はどうかとおまいますわねぇ……』


『手元に戻ってきてくれて嬉しいのだろう……』


『それにしてはあの子たちが満足して終わってる感じがしてるけど』


『否定はできない……』



 水、土、風、火が空腹順番に発言し、そして完全に眠りに落ちてしまった自分たちの主人となった人間の少女を見つめる。


 すやすやと寝息を立てて眠るその姿を見てほっこりとしながら、彼らはあまりにも空回りしている彼女の家族に警告に出かけたのだった。





 眠りから意識が浮上して目を覚ませば、朝日が部屋を明るく照らしている。よく寝た、と思いながら体を起こしてうんと伸びをしようとした時、私はベッドの周りに人がいることに気付いて驚いて固まってしまった。


 誰!? と思ってその場にいる全員の顔を確かめてそしてどう反応すればいいのかわからなくなった。


 その場にいるのは父と母、それにシエルお姉様とジュードという、間違えようもない私の家族が揃っている。



「……な、何かあったんですか……?」



 そう聞いてしまうのは仕方のないことで、けれど、私がそう声を発した瞬間に、全員が全員、ガバッと頭を下げてきて、思わずベッドの上で後退してしまう。それほどまでにみんなの勢いがすごかった。


 訳が分からずに瞬きを多く繰り返していると家族が異口同音で一言。

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