ピックアップ御礼
彼らは彼女を甘やかしたくて仕方がない。
第72話
――これは、ステラがまだマレと婚姻を結ぶ前のお話。
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Said :ジュード編
勉強の時間を終えて、講師してくれている先生に頭を下げてお礼を言う。私のお礼を受けて先生もお疲れ様と頭を撫でて部屋からさっていったのを見届けて、早速、今日教えてもらったところの復習をしなきゃとおもいもう一度机に向かおっとした時。
「姉様! 終わったのなら一緒にお茶を飲みましょう!」
珍しくノックもなしにばたーんっ、と扉を開けてジュード様が入室してきた。
「ジュード様……」
「呼び捨てでお願いします」
「……いえ、その」
「慣れてくれないと、俺も困ります…」
「……できるだけ、努力はします…」
「敬語も」
「…………努力しま…あ、っと、……する、わ」
「うん!」
子供のような笑みを見せてくれたジュード様に、私もほっと胸をなで下ろす。ロトメールに帰ってきた私は本当の両親に暖かく迎え入れられて、ずっと私の部屋と決められていた場所に案内された。
最初、豪華すぎて何かの間違いではないかと何度も問い返していたが、二人とも間違いなくおまえの部屋だと言い張って、少しだけ言い合いになったのはいい思い出でもある。
少しだけそのことを思い出して恥ずかしい思いを思い返していると、ジュード様が何やら外から呼び込んだいることに気付いてどうしたのかと声をかけようとした時、多くのメイドがぞろぞろと私の部屋に入ってきたのを見て目をむいてしまう。
ギョッとして何事かと瞬きを何度も繰り返していると、ジュード様が満面の笑みで、それはもう本当に満面の笑みで、言い放った。
「たくさんお菓子を用意させました。一緒に食べましょうね、姉様!」
「…………」
これを全部……? と言いたくなるほど机の上に乗り切っているんだかいないんだかの量のお菓子が並べられた。さすがにこんなにもたくさんは食べられないと言おうとしてジュード様に振り返って、しかし満面の笑みで私を見つめている彼に、何も言えるはずもなく。
私は、用意されたお菓子をせっかくだからとなんとか言葉にしてジュード様と共にいただくこととなったのだった。
あまりに量が多いため、全部食べなくてもいいとわかってはいてもなんだかもったいないような気がして、私もできるだけ食べていたが、すぐにお腹がいっぱいになってしまう。
もともと少食だったのがたたってしまった。しかし、食べていないとジュード様が勧めてくるという悪循環。私は打開策として、自分に勧められる前に、ジュード様のためにお皿に盛ったものをジュード様に差し出すということをし始める。と、嬉しそうに受け取ってそれを頬張っていく彼を見つめて、ほっと安堵したのは内緒事である。
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