第71話

said:ロトメール(ジュード)



 突然真夜中に、突風が部屋の中で荒れ狂うのを感じて、俺は慌てて起き上がり突然の訪問者を招き入れた。



「……お願いですから、部屋の中をぐっちゃぐちゃにするのやめてもらえませんか?」


『そんなことはどうでもいい。それよりも気になることがあるの』


(いや、全然どうでも良くないんだけど)



 そう思いながら、俺はなんとかため息を飲み込んで突然の訪問者である風のエレメント様を見つめた。


 薄い緑の髪を無造作に括っている多分女の子だろうその人を見て、なんなんだと思いながら言葉を待つ。



『あの、マレってやつの年は幾つなの?』


「は?」


『ステラがね、気になってたから。教えたら、頭撫でて甘いものでもくれるかなって』



 なんなんだその羨まし状況は! 俺も姉様にあって頭撫でてもらいたいのに!!


 と、そんなことはどうでも良くないけどどうでもいい。



「マレの年齢ですか? ……たしか、今はもう31だったと思いますけど?」


『…………えっ』


「?」


『…………だいぶ…歳離れてるんだね』


「そうですね。初めてあった時に、おじさんって呼びかけたらめっちゃ笑顔で凄まれ怒られて、それからは、お兄さんかマレと呼んでくれって言われたので、名前で呼ぶようにしたんです」


『……………………そう』



 微妙な反応の風のエレメント様に、俺は首をかしげるしかできなかった。



said:ロトメール(シエル)



 睡眠の邪魔にならないようになのか、そっと私の体をゆりおこす振動に、はっとして、私は体を起こし、すぐそばにある剣に手を伸ばし、抜刀する構えをとる。


 しかし、続いた女性の『きゃっ』という声に、私は首を傾げて辺りを見回し、そして目があった。



「……え、水のエレメント様?」


『ご、ごめんなさいね。ちょっと、どうしてもあの子のために聞きたいことがあったから、人にとっては失礼だとわかっていたのだけれど……』


「あの子……ステラですか? 何かあったのですか?」


『いえね、特別何かがあったわけではないのだけれど、気になることがあってね?』


「きになること?」


『そう、あの子の夫となった彼って、年は幾つなの?』


「え?」


『あの子、気になってるみたいで。教えてあげたら、私の腕に飛び込んできてくれるかなと思って、我慢できずに来ちゃった』



 語尾に星のマークがつきそうな勢いでそう言い切った水のエレメント様に、わたしは多少脱力しつつも記憶を思い起こす。



「マレの年齢ですよね、たしか31だったと思いますよ?」


『まぁ…まぁまぁまぁ。そうなのねぇ……そう…』


「? どうなさったのですか?」


『いえ、やっぱり、格好つけたかったのかしら? まぁ。とりあえずありがとうね、じゃ、遅くにごめんなさいね〜』



 そう言って、水のエレメント様はふわぁっと、その場から消えてしまった。



「…………なんだったんだろう?」



 その疑問だけが残ったのは言うまでもない。

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