第68話
「ジュード、私は、すごく幸せですよ」
だから、自信を持って言える。
こんな嫁ぎ遅れの私を貰ってくれるマレ様に感謝してもし足りないし、こんな私をここまで支えてくれたジュードに、シエル姉様にも、感謝しかできない。
私に足りないものを一つ一つ見出して、教えて、怒って励まして、褒めて。
家族の触れ合いが、姉や弟という存在との触れ合いが、あんなにも心温まるものなのだと教えてくれた。
だからこそ、私は今、ここにこうして、真っ白な生地と真っ白なレースをふんだんに使ったドレスを着ていられるのだ。
泣きたくなるほどに嬉しい。
私は、幸せになってはいけないのだと思っていた。
フロル国で、フルールになにもしてあげられなかったことを、今だに後悔はしている。自分にどれほどの害が出たとしても、私もジュードやシエル姉様のように接してあげることができていたならばと、考えることだってある。
けれど、過去を振り向いてはいけない、縛られてはいけない。
その咎は、背負い続けながら、それでも、私は私を愛し、慈しんでくれる人と一緒に歩いて行きたいから。
「……さて、そろそろ、開始かな」
「マレ! ちょっと待って!」
「これ以上待つのは流石に嫌なんだが……?」
「いいから!!」
はぁ、とため息をつきつつ、ジュードの言葉を聞き入れるあたり、彼は相当に優しい人なのだろう。まぁ、それも彼が心を許している人限定なのかもしれないけれど。
「……幸せになってください。姉様」
「ジュード……」
「大丈夫ですよ、マレなら。姉様を溺愛してますし。なんであんなにもなのかは分かりませんが。けど、もし、泣くようなことがあれば飛んでいって、我が国にさらってきて差し上げます」
「……ふふっ、とても、心強いわ」
「そんなことになったらですよ? …………大好きです」
「ありがとう。私も、大好きです」
私の手をぎゅっと握って、照れた頬を誤魔化すように、それでも、私をしっかりと見つめて微笑んでくれるジュードに私も同じように微笑みを返す。
そうして、私は、大切な一歩を踏み出す――。
大きな十字架の前で、私は愛しい人に誓いを立て、愛しい人は私に誓いを立ててくれる。
柔らかな、それでいてきらきらと光を反射するステンドグラスに見守られながら。
多くの人たちに見守られながら。
この場にいない、私の大切な人を、私が勝手に思いながら。
――私は、愛しい人と、口づけを交わす。
優しく、それでいて、きちんと想いの詰まったその口づけに、自然と笑顔が溢れて。
拍手喝采が飛び交う。
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